自筆証書遺言の落とし穴とは?
遺言の相談に来られた方には、原則公正証書遺言をおすすめしています。
自筆証書遺言だったらすぐに作れて費用もかからないのに、なぜあえて費用をかけてでも公正証書をすすめるのか、と疑問に思う方もいらっしゃるでしょう。
それは、自筆証書遺言にはいくつかの落とし穴があるためです。
自筆証書遺言の落とし穴
①紛失・破棄したら再生できない
なんといってもこれが一番問題です。
人に見られたくないがために、分かりにくいところに隠し、そのままご自分でもどこに収納したか分からなくなったことはありませんか。
ご自分でも分からなくなるような場所であれば、自分が亡くなった後、大事な遺言をどうやって相続人に見つけてもらえばいいのでしょうか。
また、遺言を偶然見つけた相続人が内容に納得がいかないからといってわざと破り捨ててしまったり、大掃除の時に他の書類に紛れてゴミに出してしまったりすると、再度書き直すしかありません。
なお、銀行の貸金庫は、相続が開始されると凍結されて開けられなくなるのでおすすめしません。
この点、公正証書遺言であれば、原本は公証役場に保管されているため、遺言の紛失リスクがありません。
②要件が整っていないと無効になる
自筆証書遺言は、財産をどのように分けるかを決める大事な書面です。言い回しが曖昧で、解釈が分かれるような文言があると、後で相続人たちを余計に悩ませることになりかねません。
また、遺言のような内容であっても必要な要件が揃っていないために、遺言としては無効になることもあります。
このため、よほど法律文書に慣れている方でない限り、専門家に相談しながら作成する方がよいでしょう。
③検認が必要である
自筆証書遺言は、相続開始後に戸籍などの書類をそろえて家庭裁判所で検認手続きを受けなければいけません。
その手続きだけでも2~3ヶ月かかり、その間は銀行口座の解約、不動産の名義変更などすべての相続手続きができない状況になります。
また、家庭裁判所から相続人全員へ検認通知が送付されるため、遺言に記載されていない相続人であっても検認に立ち会う権利があります。
それに対して、公正証書遺言であれば検認が不要のため、相続開始後にすぐに銀行の手続きなどに取りかかることが可能です。
手続きの手間を後に残すか、先の手間をとるか、どちらがよいでしょうか。
これらをお話すると、ほとんどの方は公正証書遺言を選択されます。
公正証書遺言には、費用をかけるだけの価値があるのです。